【宝石の要素】希少性を決める具体的な例

まずは希少性についての振り返り

希少性とは、とある石を「宝石」と定義づける上で必須となる要素の1つである。

宝石で希少性といえば、数が少ないというイメージが先行するが、実際に数が少ないというのは非常に曖昧な表現である。

もちろん、単純に採れる量が少ないという希少性もある。しかし少々難しい話にはなるが、市場における需要と供給の関係によって希少性があるとされることもある。

この市場の希少性に関しては、宝石の定義を解説したページにて、ダイヤモンドの希少性のからくりを一例として取り上げた。

(宝石の定義へのリンク)

ここでは、その他に希少性に関する豆知識的な例をいくつか紹介していく。

希少性と市場価値が一致しないことがある?

先ほど市場の希少性についてダイヤモンドを例に解説したと述べたが、もう一度ダイヤモンドの例に軽く触れつつ、他の一例を紹介する。

ダイヤモンドの希少性と市場価値

ダイヤモンドは世界中で新しい鉱脈が次々に発見されており、他の宝石に比べてかなりの採掘量となっている。

しかし実際は、デビアス社がダイヤモンドの市場を全て牛耳っており、ダイヤモンドの市場への供給量を調整することで、ダイヤモンドの市場価値を徹底的にコントロールしている。

さらには、デビアス社が消費者向けの広告宣伝も行っており、その宣伝効果で希少性と需要のバランスが保たれている。

ツァボライト・ガーネットとエメラルドの希少性と市場価値

エメラルドは、エメラルドグリーンという色があるくらい、誰しもが一度は耳にしたことのある知名度の高い緑色の宝石である。

一方で、ツァボライト・ガーネットという宝石を聞いたことがある人はかなり少ないのではないだろうか。ガーネットは一部の石好きの間では有名かもしれないが、それにツァボライトという名前がつくとかなりマニアックな種類のものになってくる。

なぜこの2つの宝石を取り上げているかというと、実はこの2つの宝石を比較してみると、実際の希少性と市場価値が少しずれているのである。

察しのいい方ならわかるかもしれないが、エメラルドに比べてツァボライト・ガーネットの方が採れる量も圧倒的に少なく、かつエメラルドより美しいことも多々ある。しかし、市場価値としてはエメラルドの方が高くなっていることが多いのである。

これは最初でも触れたように、ツァボライト・ガーネットの希少性が高すぎるがゆえに、消費者の間での知名度がエメラルドよりも非常に低く、そもそものツァボライト・ガーネット自体の存在を認識されていないからである。

知名度が低いとなぜ市場価値が下がるかというと、これもダイヤモンドの例で登場した需要と供給の関係性が起因している。知られていなければそもそも欲しい買いたい需要は生まれないので、供給が多かろうが少なかろうが関係なくその物の価値は下がる。

どんなに自分に才能を持っていても、それを周りに知られていたり発揮する環境が作れていなければ、その才能に価値は生まれないというのと同じ理屈である。

宝石の知名度・認識度合いが市場価値に影響するということがこの例でわかった。

究極に希少性の高い宝石「エキゾチックジェム」

希少性のある宝石の中でも、さらに採掘される数が少ない等によって希少性がひときわ高い宝石がある。この宝石のことを「エキゾチックジェム(Exiotic Gem)」と呼んで分類される。

もちろん希少性が高いだけではなく、美しさや耐久性もあるため、エキゾチックジェムは宝石としての絶対的な価値が高い。

しかし、さっきの例で登場したツァボライト・ガーネットと同様に、希少性が高すぎるがゆえに、存在自体があまりに知られていないために、その究極的な希少性に見合ったような相対的な価値をつけることができていないのである。

主にエキゾチックジェムには下記のような宝石が例として存在する。

  • ボラサイト
  • チルドレナイト
  • シンプソナイト

当然ながら、いかにもかなりマニアックな名前で、聞いたことのある宝石は見当たらないと思われる。

必ずしも希少性が高いから価値が高くつくとも限らないという例である。

少し違う側面から見る希少性「ペア」と「スイート」

数が少ないという希少性を少し違った視点から見てみよう。

宝石は自然が生んだ産物なので、基本的には2つとして全く同じというものは存在しない。しかし、まれにそれが起きることがある。

いきなり専門用語を並べるようで申し訳ないが、カラー・クラリティー・カットが完全に一致する宝石が存在することがある。これらの宝石を「ペア」や「スイート」と呼んでいる。

このペアあるいはスイートの宝石は、単独で発見された同程度の宝石よりもカラット(=重量)あたりもしくは1個あたりの単価が高くなる。

つまり、宝石1個見つかるのにも数が少なくて希少性が高いことに加えて、その宝石が品質まで全て一致した状態でまたさらにもう1つ見つかった場合、その宝石の希少性はより高まるのである。

それだけ、自然界で同じものを2つ発見するというのは困難なことなのだ。

まとめ

単純に採れる数の少なさだけで希少性が全て決まるというわけではなく、知名度であったりさまざまな要因や観点から希少性は評価されている。

自分という存在はもちろんこの世に1人しかないが、人間という括りでいけば地球には80億人以上の自分と同じ人間がいる。地球だって、宇宙に何千億何兆個もある星の中で唯一無二の星だが、宇宙のどこかには地球と同じような星があっても全然不思議ではない。

でも、その人にしかない個性であったり自分の住む国にしかない伝統や文化であったり、地球にしかない自然環境だったり生き物の進化の過程があるという見方もできる。

視点を変えてみると、地球規模、いや宇宙規模で、いろんな側面から自分の存在の希少性というのが見えてくるのかもしれない。

宝石はそんな未知数の自然界が生みだした産物だと思うと、希少性がどうとかではなく、神秘的で奇跡的なものを目の当たりにしているように感じる。

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